近隣の住民に親しまれていた、北海道大学の構内の芝生の緑地。
この春から、「子どもが走ると芝生が傷む」という理由で、緑地への立ち入りが禁止され、親子連れや近隣の幼稚園・保育園が戸惑いの声をあげているそうです。
●多くの住民に愛された、都会のオアシスだったのに…
札幌市内にある北海道大学、通称、北大(ほくだい)は、国立大学法人。
創立100年以上の歴史があり、緑あふれる広い敷地は、住民からも愛されて、近隣の幼稚園や保育園がお散歩などでも訪れ、多くの親子連れでにぎわってきました。
札幌市内の中心部には、ビルが多く、園庭のない幼稚園・保育園も数多く存在します。
そんな市内にある北海道大学の芝生は、札幌の子どもたちにとってのびのび過ごせる貴重な場所です。
今回立ち入り禁止にされた場所は、大学構内、クラーク会館近くの中央ローン。約1万2千平方メートルという広大な敷地です。
ふかふかの芝生は、小さな子どもが転んでも安全ですし、近くを小川が流れ、市民や観光客も憩いの場として利用してきました。
Photo by Always Shooting
●貴重な子どもの遊び場だったのに
しかし、春から「芝生が傷むから」との理由から立ち入り禁止になったため、「北大に遊びにいく幼稚園や保育園が激減した」と、近隣の保育園の園長先生は語っています。
毎年、北大を遠足の行先にしていた幼稚園も、今年は芝生の上でお弁当を食べることも禁止され、仕方なく別の場所に子どもを連れて行ったそうです。
北大は今年5月から、中央ローンと周辺の芝生を「幼稚園・保育園の園庭ではない」ということで、利用規制を求める文書を、訪れた各園に手渡しました。
その結果、春に延べ50団体来ていた団体は、夏には延べ15団体へと減ったそうです。
●税金3千万の管理費
幼稚園・保育園を遠ざけてまで芝生を保護する理由は、年間3千万円もかかる芝生の維持管理費です。
北大の近藤哲也教授によると「子どもは走り回るので芝が傷み、膨大な管理費がかかります。親子連れなら指導が行き届くのでいいけれど、団体での利用は控えてください」
と苦しい現状を話します。
北大は国立大学法人なので、運営に税金が使われています。
ふかふかの芝生を維持するために、かなりの税金が投入されているとは、確かに考えさせられますね。
Photo by Ben Hosking
●みんなで利用して維持していけばよいのでは
この状況に対して、札幌中心部のまちづくりに携わる工学院大の倉田直道名誉教授は、
「地域に根差したキャンパスと思っていただけに残念」と語ります。
「お互いに歩み寄り、例えば幼児が草地の維持管理を体験したり、大学も芝生の一部を開放したりする方法もあるのでは」と追い出す以外の解決方法があるのではないかと提案しています。
●緑地を園庭のかわりに
今、園庭を芝生にする幼稚園や保育園が増えています。
しかし立地的にどうしても園庭そのものが確保できない園もあります。
一方で、国が作った機関には広いスペースが確保されて、あまり利用されていないケースもあります。
地域の利用者が、公的な敷地をうまく共有して、緑地を未来や地域のために生かせる仕組みを作っていけるといいですね。
Photo by Bruce Szalwinski