厚生労働省は、法定の育児休業期間を、現行の「最大1年半」から、「最大2年」へと延長することを検討しています。
これと同時に、父親の育児参加を促進するため、この延長期間の一部を、父親に割り当てることを検討し始めています。
このシステムは「パパ・クオータ制」と呼ばれ、ワークシェアの進んでいる北欧では一般的な制度です。
●ノルウェーでは少子化対策にもなっている
「パパ・クオータ制」を最初に導入したのは、1993年のノルウェーです。
ノルウェーでは、育休は最長で59週間取ることができますが、そのうち10週間は、配偶者が交代して取らないと権利が失われることになっていて、現在では大半の父親が育休を利用しています。
この「パパ・クオータ制」によって、母親たちは子育てしやすくなり、その結果、子どもの出生率がアップしています。
●日本にも似た制度はあるけど…
現在、日本の父親の育休取得率は2.65%。
育休を取得する父親がなかなか増えない現状があります。
実は現在でも、父親と母親の両方が育休を取った場合、原則「1年」の育休期間を「1年2カ月」までに延長できる制度が存在しています。
しかし、制度そのものも知られていないうえ、実際にこれを利用した父親は3%、母親は1.9%と、ほとんど活用されていません。
また、父親の育休は1か月未満が多く、ちょっとした「手助け」程度にとどまるケースが多いのが実情です。
日本政府は、2020年までに、父親の育休取得を13%まであげることを目標にしています。
●しっかり育児をする父親を、守れる職場に
実際は、「育休をとって、貴重な乳幼児期ののわが子をたっぷり触れ合いたい」と考える父親が多いのに、実際に父親の育休取得が増えないのは「会社に評判が悪くなりそう」「出世できなくなりそう」など、仕事でネガティブな影響が出ることを恐れているからです。
現在も、育休を理由に解雇や減給、左遷することを会社に禁止していますが、厳密な規定などがなく、残業しないと怠け者、子どものことで休むと使えない、という、「空気」が蔓延する職場が多いようです。
男性が育休を取りにくい空気のまま、新しい制度をスタートさせても、結局あまり利用されないのは変わらないかもしれません。
そうならないためには、同時に「日本の職場」も変えていってもらいたいものです。
例えば、会社のトップが必ず時短勤務を取る、会社内で○○%の父親が必ず育休を取る、などの強制的な制度で、日本の職場を変えていく必要がありますね。
また、母親たちも、最大3年の育休がある会社にいるのに、0~1歳のうちに復帰してしまう女性が多いのは、保育園に入れなくなるからです。
0歳のうちは入園のチャンスが大きいけれど、2~3歳にもなると、空枠のある保育園はほとんどなく、認可園に入れなくなるのが実情です。
2~3歳から入れる園を増やす、保育園待機児問題を解消するなど、子どもの受け入れ先も、改善してもらえるといいですね。
Photo by Rob Bixby