自民党の有志議員たちが、子どもの多い世帯ほど所得税を軽減する『N分N乗方式(=世帯課税制度)』の導入を検討しているとのことです。
●子どもの人数が多い家庭は、所得税を軽く!
現在の所得税は、稼ぎが多いほど税率が高くなる『累進課税』だけの制度です。
例えば、夫婦共働きの場合、夫と妻の両方にそれぞれ所得税がひかれてしまいます。
そして、妻や子どもを養う費用を、『扶養控除』で補っています。
一方この『N分N乗方式(=世帯課税制度)』では、世帯の合計所得を、家族の人数で<割って>、そこに『累進課税』の税率を掛け、一人当たりの税額を算出し、それを家族の人数で<かけて>、世帯が納める所得税の合計を決めます。
●ストップ少子化!フランスで成功している制度
フランスでは100年以上前から少子化が問題視されていましたが、この『N分N乗方式』を60年以上前に導入したことで、少子化の歯止めに成功しました。
もちろん『児童手当』も導入したり、他の政策も併用しています。
日本でも、「金銭的な理由で、もう一人子どもを産むことをためらっている」という夫婦が多いため、子どもをもう一人育てやすいサポートがあれば、追い風となりそうです。
●子どもが増えるほど、大幅に減税!
例えば同じ世帯年収1000万円でも、納税する金額に大きな差が付きます。
独身の人なら330万円、子どもが2人いれば100万円、子どもが4人なら48万円という納税額となるのです。
同じ年収でも子どもが増えるほど、ケタ違いに負担が軽くなっています。
同じ<世帯年収1000万円>で比較
【A】独身の人の世帯(1人家族)
収入 1000万円 ÷1人=課税対象 1000万円→税率 33%が適用※
税額 330万円 ×1人= 世帯の合計納税額 330万
【B】夫婦と子ども2人の世帯(4人家族)
収入 1000万円 ÷4人=課税対象 250万円→税率 10%が適用※
税額 25万円 ×4人= 世帯の合計納税額 100万
【C】夫婦と子ども4人の世帯(6人家族)
収入 1000万円 ÷6人=課税対象 166万円→税率 5%が適用※
税額 8万円 ×6人= 世帯の合計納税額 48万
(※は現在の累進課税の税率)
とはいえ、子ども一人成人させるまでにかかる教育費は2000万円以上ですから、このくらいの差をつけても、まだギリギリといえます。
けれども、どうせ同じ年収を稼ぐなら、税金として持っていかれるより、わが子にしっかりかけてあげられますね。
●国全体で子どもを育てる
この制度は一部から「独身の人がかわいそう」「子どものいない家庭は不利」という意見もあります。
しかし、子どもがいない人たちが将来、年老いた時、現在の子どもたちにお世話をしてもらったり、彼らが納めた税金でケアを受けたりします。
子どもたちは、日本を支える貴重な人材となるのですから、今のうちに、国全体で子どもを育てることがとても重要なことだといえます。
●デメリットは?
いいことづくめに思える制度ですが、「税率」の設定によっては、以下のようなデメリットがあるようです。
・中~低所得の家庭には、あまり恩恵がない(もともと税率が低いので)
・専業主婦が仕事を始めて共働きになると、世帯の税率が上がってしまう可能性がある
●うちの子に「きょうだい」を増やしてあげたい!
そのへんをもう少し改善してもらって、多くの子育て家庭にメリットをもたらし、希望する夫婦には「うちの子に、妹か弟をもう1人…!」という願いをかなえられるようになるといいですね。
両親に相談できない時、親が倒れた時、心を支えあうきょうだいの存在は、子どもにとって、かけがえのない財産となるはずです。
もし経済的な理由だけがネックになっているなら、この政策は一つの解決策になるかもしれませんね。
<参照>
※現在の累進課税の税率一覧
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
課税される所得金額 税率
195万円以下 … 5%
195万円~330万円 …10%
330万円~695万円 …20%
695万円~900万円 …23%
900万円~1,800万円 …33%
1,800万円~4,000万円 …40%
4,000万円~ …45%
Main Photo by Jacob Brown Photography