●検査結果は『異常なし』だったのに、生まれたら『ダウン症の子ども』だった
北海道に住む44歳のママが、妊娠中に、胎児がダウン症かどうかわかる出生前診断(しゅっしょうまえしんだん)を受けました。
医師から「問題なし」といわれていたのに、実際に生まれてきた赤ちゃんはダウン症でした。
この赤ちゃんはダウン症のほか、肺化膿症・無気肺、肝線維症、黄疸などの合併症を起こしており、生後3か月でこの世を去りました。
これに対し、この夫婦は、検査の診断ミスをしたという医師に、1000万円あまりの損害賠償を求める訴訟を起こし、話題になっています。
夫婦の訴えは、おもに2つ。
「生まれなければ子どもは苦しい思いをしなかった…死んだ子への慰謝料」
「診断を間違えたことで堕胎の選択ができなかった、産む場合も準備ができなかった…夫婦への慰謝料」
判決では、前者は退けられましたが、後者は認められ、担当医師も告知ミスについて謝罪をしています。
●出生前診断とは?
高齢出産する人が増えて、最近急速に増えているのが、胎児の健康状態を検査する出生前診断(しゅっしょうまえしんだん)。
胎児が生まれる前に、おもにダウン症などの染色体異常があるかどうかを、検査するものです。
妊婦さんのお腹に針を刺し、わずかな羊水を採取して調べる羊水検査がメインですが、最近は妊婦さんの血液だけで診断できる新しい出生前診断が可能になり、診断を受ける人が増えています。
●お腹の赤ちゃんがダウン症だったら…?
この検査を受け、もしお腹の赤ちゃんがダウン症だと判定が出た場合、どうするのか?
実際に、胎児に異常があると検査結果が出た場合、お腹の赤ちゃんを中絶することを選ぶママが9割もいる、という、ショッキングなデータが明らかになっています。
●堕胎罪とは?
もちろん、ダウン症などの染色体異常があるからという理由で中絶することは、基本的には認められていません。
実のところ日本には中絶する権利というものはなく、「レイプなどによる妊娠」「身体的または経済的に子供を産み育てることが困難な場合」のケースだけ、中絶することが認められているそうです。
しかし多くの場合、「経済的に困難」を拡大解釈して、中絶の理由にしているのが現状です。
本来、胎児の病気を理由に中絶すれば、堕胎罪に該当するようです。
羊水検査の精度は、99パーセント。つまり完全でないのです。
検査結果を理由に中絶したとして、もし本当は違っていたら、と考えるとなんともいえない気持ちになります。
●染色体異常の人は生まれてはいけないの?
このような中絶が増えてくると、やがて、ダウン症などの障害をもつ人たちが生きていく権利、生まれてくる権利、障害のある子を産む権利、そういった基本的人権がゆらぎかねない、と言われています。
ダウン症なら胎児を殺してしまっていいのか?
ダウン症でなくても、生まれた後に他の障害が見つかったら、やはりいらない命になってしまうのか?
五体満足でないことは迷惑なのか?
そもそもどんな障害のある人も育てやすく生きやすい世の中にするべきでは?
医学が進歩していろんな選択が可能になるほど、命と中絶の問題はこれからも深刻化していきそうです。
<出典>
「現代ビジネス」livedoor NEWS
Photo by Ginny Washburne