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「命のパスポート」が乳幼児の生存率を上げた!国民も難民も…全ての妊婦に母子手帳を

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日本でお子さんをお持ちのママのほぼ100%が持っている、母子手帳(正式名称:母子健康手帳)。
戦後の日本で、アメリカのミルク会社が作ったリーフレットを参考に、母子手帳が考案されたと言われ、何度も改良を経て、独自の進化をしてきました。

●母子手帳が日本の乳児死亡率を下げた

戦後まもなく、親が適切な医療も受けさせなかった時代、子どもが病気や事故で亡くなるのは「しょうがないこと」とされていました。
しかし、母子手帳の普及によって、小児医療の知識や、子育てのアドバイス、妊婦と乳児が健診を受けることの大切さが浸透しました。
その結果、日本の乳児の死亡率は、1000人中の60.1人から、たったの2.6人まで下がったと言われています。

●母子手帳はインドネシアにも輸入された

この日本独自の母子手帳のしくみを知った、インドネシア人の医師が、この素晴らしさに感動し、1989年に、インドネシアで導入しました。日本政府もこれを支援し、やがてインドネシア全体に母子手帳が普及したのです。

当時のインドネシアでの乳児死亡率は、正確な統計すら残っていないそうですが、およそ戦後すぐの日本と同じような、高い死亡率で、医療への理解や子育て制度などは劣悪な状況だったそうです。
乳幼児健診の制度をつくっても、知識不足から、健診を利用する親が少なかったのです。

しかし母子手帳の普及と同時に、医療知識が定着し、さらに「親としての自覚」も強まり、子どもを守り、健やかに育てようというプライドも生まれてきたのだそうです。
その結果、健診の受診率が上がり、乳幼児の死亡率が下がったのは言うまでもありません。

●日本も見習いたい!インドネシアの母子手帳

インドネシア独自の文化に合わせ、母子手帳も、お国柄に合わせて、進化していきました。
そのため日本にはない特徴が見られます。

1)文字が読めない親のために、イラストが多い

インドネシアには、文字の読み書きができない親もまだいます。そのため、わかりやすいイラストで説明されていて、文字が読めなくても理解できるようになっています。
産後の寝不足で疲れた目でも、イラストなら見やすそうですね。

2)パパが多く登場する

赤ちゃんのお世話を解説するイラストに、パパがたくさん登場するのも、インドネシアならではです。
もともと男性も積極的に育児をする傾向のあるインドネシアですが、母子手帳の表紙にも必ずパパとママがそろって登場しています。
素晴らしいですね!むしろ日本の手帳が「母子」に限定されていることが不自然にすら感じられますね。

3)共通語で書かれている

日本人にはピンとこないかもしれませんが、インドネシアは多民族国家で、地域によって様々な言語が使われています。
しかし、母子手帳は、全国共通語のインドネシア語で統一して書かれています。
これは、引越しなどで別の地域に行っても困らないよう全国統一になっているからです。
さらに、いろんな地域出身の職員が働く医療現場でも混乱がないよう、医療ミスを防ぐための配慮がされた結果なのだそうです。
「引越しで言語が変わっても、同じ医療が受けられる」というのは、とてもありがたいことなんですね。

4)サイズが大きく、分厚いテキストのよう

日本の母子手帳は、携行しやすいように小さいサイズが主流ですが、インドネシアの母子手帳は一回り大きい、A5ノートサイズです。
さらに、赤ちゃんのお世話の方法などが、具体的に細かく指導されていて、テキストとしての役目も果たしています。
日本は育児書が豊富で、ネット情報もあり、ほとんどのママが子育ての知識を持っていますが、インドネシアでは母子手帳がママたちの育児バイブルとなっているようです。
日本発祥の母子手帳ですが、インドネシアで独自の進化をとげていて、日本にも逆輸入したいと思うメリットがいくつもありますね!

日本も「母子手帳」という名称をそろそろやめて「親子手帳」というネーミングにした方がいいかもしれません。

●世界30か国に広がっている「命のパスポート」

こうして、日本の母子手帳は今や世界中に広がっています。
オランダなどの先進国、パレスチナ自治区などの戦闘地域にも普及し、現在世界30か国以上で利用されているそうです。
その結果、どの国でも、妊娠、出産、育児の環境が改善しているようです。

これからも世界中の乳幼児と母体を守るため、青年海外協力隊で知られるJICA(ジャイカ)では、さらに各国で母子手帳の導入をサポートしています。

●難民になっても子どもに適切な医療を受けさせられる

紛争の多いパレスチナでは、ある日突然、道が分断されたり、町が占領されたりすることが日常茶飯事です。
当然ながら「かかりつけ医」に明日もいける保証はありません。

そんなパレスチナでは、これまで、難民になって見知らぬ医師の診察を受けるとき、子どもの病歴や経過を伝える術がありませんでした。
そのため、体質に合わない薬を処方されたり、持病などの適切な処置が受けられず、最悪の場合、亡くなってしまうケースも珍しくありませんでした。

しかし、2006年にアラビア語の母子手帳が導入されると、住む場所を追われる難民となっても、きちんと母子の健康状態を管理することができるようになりました。

また、パレスチナの母子手帳は、既に難民であっても(外国人であっても)区別なく妊婦全員に配布されたことから「命のパスポート」と呼ばれています。

また学ぶ機会の奪われた親にも、子育てに必要な知識や健診の重要性が伝わるようになったのです。
かなりの人数の母子の命や健康が守られているのではないでしょうか。

●よいところは逆輸入も!

世界中に広がりつつある母子手帳。その国に合ったものへ改善して、親子にとって本当に使いやすい母子手帳へ進化していくのですね。

日本の母子手帳も、もっと現実に即して、さらに時代にあったものへ改善されていくといいですね。

Photo by Jonny Hunter

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