赤ちゃんの肌とママの肌を密着させるカンガルーケア。
お互いを肌で感じることで、衰弱した赤ちゃんを救い、元気を与えることは知られています。
でもママだって、赤ちゃんからパワーをもらっているんです。
それが実証された、アメリカで起こった、奇跡のエピソードをご紹介します。
23歳の妊婦、シェリー・カウレーさんは、今まさに陣痛を迎えていました。
初めての子を身ごもり、優しい夫に寄り添われ、間もなくママになる…、幸せな夫婦そのものでした。
しかし分娩の状況は悪化、母子の命が危ぶまれ、すぐに救急搬送され、帝王切開することになりました。
担架で運ばれ、手術台の上に上がる時、シェリーさんは不安で泣いていました。
何かとても恐ろしいことが起こる気がして、大きな恐怖を感じていたのです。
そして、シェリーさんの不安は的中。
帝王切開の手術で、赤ちゃんは元気で無事に生まれてくることができました。
しかしママであるシェリーさん自身は、手術中に、動脈に大きな血栓ができ、意識を失ってしまったのです。
手術室には緊張の空気が走り、医師たちはあらゆる手をつくして、生き返るよう対処をしました。
しかし絶望的な状況となってしまいます。
赤ちゃんの命と引き換えに、ママは一生目を覚まさなくなる…。
付き添ったパパは、後にこう語っています。
「初めての子どもが生まれて生きて、これ以上ないほど嬉しかった。
なのに、その直後、妻と一生のお別れになるなんて…。
事実が受け入れられず、ぼうぜんとしました。」
もうシェリーさんの意識を戻す方法はありませんでした。
わらにもすがる思いで、看護師が最後の手段として、生まれたばかりの赤ちゃんをシェリーさんの胸の上にそっと寝かせました。
「赤ちゃんにとってママとのスキンシップがとても重要なものだから、逆に母親にも効くんじゃないかと思って。
赤ちゃんの肌の温もりや、心臓の鼓動を感じて、泣き声を聞いたら、きっとママが戻ってきてくれるんじゃないかと願ったの」
しかし、赤ちゃんは眠ってしまい、何も起こりません。
祈るような気持ちで、看護師たちは裸の赤ちゃんをくすぐったり、体に触れて刺激をしました。
それでもなかなか泣かないのです。
長い10分が過ぎ、ようやく赤ちゃんが泣き声をあげました。
すると、奇跡が起こったのです。
赤ちゃんの泣き声を受けて、それにこたえるように、シェリーさんの心拍計が再び反応を始めたのです。
これを見て、その場にいた全員が安堵しました。
シェリーさんの容体は回復し、出産から1週間後に意識を取り戻し、ようやく赤ちゃんを抱くことができたのです。
赤ちゃんはライアンと名付けられ、すくすく成長しました。シェリーさんも容体が順調に回復していきました。
あれから1年、今では二人とも元気で、幸せいっぱいの毎日を送っています。
「1年前は生死の境をさまよっていたけど、今はこうして可愛い娘を抱きしめていられる。
ライアンが大きくなったら、『あなたがわたしの命を救ってくれたのよ』と話すの。」
スキンシップが子どもにとって大切なことは知られていますが、親にとっても、よい影響をもたらしてくれるんですね。
親子の間にある特別な絆。奇跡の温もり。
生まれてきてくれたことに感謝しながら、ぜひゆっくりとわが子を抱きしめたいものですね。
<出典>
YAHOO!PARENTING
COSMOPOLITAN
The Washington Post
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Photo by Nelson Kwok