日本各地で急激に冷え込むようになりました。
赤ちゃんの誕生は、天候や時期を問いません。
こんな凍てつく寒空の下でも、望まない妊娠で産み落としたわが子をかかえて、途方にくれている女性がどこかでさまよっているかもしれません。
「自分では育てられない、誰にも託せない」からと、氷点下の屋外に放置されれば、新生児はあっという間に凍死します。
どうしてもやむを得ない事情があるなら、せめて、赤ちゃんの健康を最優先して赤ちゃんポストを利用してほしいものです…。
実際の赤ちゃんポストってどんなところなのでしょうか?
利用している人はいるのでしょうか?
2007年に熊本県の病院が、赤ちゃんポストを作りいろいろな意味で注目されました。
ポストと言っても郵便物を入れるポストとは違い、赤ちゃんの体調を最優先で守るための保育器です。
さらにいえば、特別養子縁組をするための施設の窓口と考えるとわかりやすいでしょう。
●ドイツには100か所も!海外で始まった赤ちゃんポスト
望まない妊娠などにより、生まれてすぐ捨てられる捨て子や、乳児殺害が後を絶ちません。特に捨て子は、誰かに保護されるまでの間放置されるため、野犬に食い殺されたり、低体温や熱中症などで死亡するケースが相次いでいます。捨てられた赤ちゃんを安全に守るために、海外で「赤ちゃんポスト」が考案されました。寒冷の国ドイツでは「赤ちゃんポスト」が全国100か所に設置されています。
日本では、熊本の慈恵病院がはじめて採用し、話題になりました。
●実際の赤ちゃんポストは、どうなっているの?
「こうのとりのゆりかご」、通称「赤ちゃんポスト」の外扉を開けると、まず、小さな窓に親に宛てられた手紙が置かれています。この手紙を取り出さないと、奥の扉が開かないようになっています。
手紙には、子どもを捨てに来た親へのメッセージや、施設の連絡先などが書いてあり、後で後悔して子どもを引き取りに来る場合の手がかりとなっています。
手紙を受け取ると、奥の扉があいて、保育器のように赤ちゃんを入れる場所があり、そこに赤ちゃんを寝かせます。赤ちゃんに最適な温度と湿度が保たれていて「こうのとりのゆりかご」の呼び名がふさわしい場所で、安全に赤ちゃんを保護します。
監視カメラも設置されていますが、匿名制のためカメラには赤ちゃんしか写らないようになっています。
防犯上、赤ちゃんを置き、一度扉を閉めるとロックされるので、外側からは二度と開ける事ができません。
赤ちゃんが来るとアラームが鳴る仕組みになっており、すぐに医療従事者が赤ちゃんの健康チェックなど対応します。
●悲しくも100人以上の赤ちゃんが預けられる現実
今までに100人以上が赤ちゃんポストに預けられていると言います。
親の勝手な都合で預けていく人も多く、一旦は預けたものの後から引き取りたいと申し出る人もいます。
直ぐに引き取られればいいのですが、中には数年経って子どもが大きくなってから引き取りたいと願い出る自分勝手な親もいるようです。
赤ちゃんポストに預けられた子どもの中には、里親が見つかり幸せに暮らしている子もたくさんいます。
子どもはモノじゃない、という意見もありますが、実際に道に置き去りにされて死ぬより、早く医療関係者に託し、スムーズに養子縁組ができるという点で、救われている赤ちゃんがたくさんいることも事実なのです。
●実は、苦しむ妊婦さんへのフォローの方が多い
ゆりかごのイメージが強い慈恵病院ですが、実は出産前、望まない妊娠に苦しむ女性をフォローする「SOS赤ちゃんとお母さんの妊娠相談」で、ベテラン助産師さんが電話やメールで相談に答えているケースの方が、実際は圧倒的に多いのです。
SOS 赤ちゃんとお母さんの妊娠相談
http://ninshin-sos.jp/
望まない妊娠で困り果てている女性の相談に答えたり、よい方法を一緒に考えていくことで、中絶や赤ちゃん殺害、産み捨て、虐待を未然に防いでいるのです。
中には小学5年生の妊娠や、親に内緒で妊娠している学生、強姦による妊娠などで苦しむ女性なども少なくないそうです。また、相談者の23パーセントは15歳未満の妊婦だったそうです。
相談したり、場合によっては早期に養子縁組の手続きをとることで、これまで500人近くの赤ちゃんが中絶や殺害から救われている現状があります。
相談当初は中絶を希望していたけど、病院の助産師さんのフォローをずっと受けながら、自分で育てていくことにしたケースも235件あるそうです。
考えさせられる「赤ちゃんポスト」の存在ですが、そもそも、望まない妊娠で苦しむ女性たちが一人でもいなくなるといいですね。