姫路の認定こども園「わんずまざー保育園」のひどい保育環境が次々と明らかになっています。
子どもを持つ親としては、目を背けたくなるような実態です。
●40人分の給食を70人の園児で分けあう
ニュースでも取り上げられているように、40人分の給食を70人の園児で分けあい、おかずはスプーン1杯。
発注する給食の数が、正規の園児が46人の分にも足りないのは、保育者としての神経を疑います。
1人分の魚の切り身を数人の子どもに分けることも日常茶飯事。
魚のしっぽしかもらえない子もいて、かわいそうだったそうです。
保護者の方は「夕方4時に帰宅するとすごくお腹をすかせていて不審に思っていた」と報道陣に語っていました。
「2年間も通わせてしまって子どもに申し訳ない」と語る保護者もいました。
子どもは与えられた食事に疑問を持たないので、ひたすら空腹を我慢していたのだろうと思うと、ただただかわいそう、という声もありました。
●残り物の給食を使いまわし
余った給食は冷凍保存して、足りない日に解凍して食べさせていました。1カ月以上古いものを使うこともあったそうです。
乳児は主食と汁物を1つのおわんの中に混ぜて食べさせていて、この事実を知って「子どもたちが人間扱いされていないと感じた」と語る保護者もいました。
●おやつはかっぱえびせん6本まで
おやつも劣悪です。
午後1度だけのおやつで、4~5歳児は「ビスケット3枚」もしくは「かっぱえびせん6本」などと決められていました。
バナナ5本を輪切りで20人の園児に分け与えたこともあったようです。
保育士たちは、子どもたちの発育のための重要な時期に、必要な栄養が足りていないことはわかっており、とてもつらかったそうですが、とても指摘できる雰囲気ではなかったそうです。
●親がいない時間は冷暖房なし
真冬でも暖房器具をほとんど使わず、保護者が送り迎えする時間だけ暖房を入れていたそうです。
こういった施設では、通常、感染症などの対策上、適切に暖房を使うことが推奨されています。
また、保護者もこんなに寒い中で保育されていると知っていたら、もっと暖かい服装をさせたかもしれません。
●定員外の園児22人を「直接契約」
認可園には定員がありますが、定員を超えてもこっそりと園児を受け入れ、不正に直接契約を交わしていました。
定員外の園児からも給食費も徴収していたようです。給食費を不正に多く集めておきながら、子どもたちの食事に全く反映されていなかったのです。
定員が46人の園に、68人が押し込まれれば、子どもたちにとってよい環境であるわけがありません。
保育士も不足しているのですから、保育の質全体が悪くなっていたと考えられます。
●人手不足で保育も不安
同園に勤務する保育士たちは、少ない人数で、異常なほどの重労働を強いられ、保育以外の掃除や洗濯などの仕事や、同じ敷地内の学童保育のお迎えや、別事業の夜間ベビーシッターに無給で駆り出されることが日常茶飯事でした。一人の保育士が、何役も強いられていたのです。
たった2人の保育士で、園内の20人の子どもを見る日もあったそうです。
いつか大事故が起こるのではと、常に大きなプレッシャーを感じながら保育にあたっていたそうです。
●超ブラック職場、保育士にタダ働きを強要
園長は、兵庫県には勤務している保育士の数を実際より多く報告して、年間約5千万円という公費を水増し請求していました。
架空の保育士3名を多く雇っていることにし、その分の給与を園長が手元に置いていました。
人数だけでなく、契約内容も嘘であふれています。
市に提出した雇用契約書とは別に、保育士には『裏契約書』を取り交わさせていました。
表向きより少ない給料でこき使われていたのです。
裏契約書には
「30分以上の遅刻ならボランティア勤務2日間」
「無断欠勤すれば無給のボランティア勤務7日間」
「保護者を待たせたら10日間のボランティア勤務」など、労働基準法違反となるとみられている内容ばかり。
ボランティア勤務とは、もちろんタダ働きのことです。
疑問を持ちつつも、保育士たちは従うしかなかったそうです。
心身を疲弊して、退職していく職員も少なくなかったそうです。
●説明会も退席した園長、反省の色見えず
2016年1月に「園児数が多い」といううわさから市が確認したところ、小幡育子園長は偽の書類などを提出し、発覚にはいたりませんでした。
また、2017年2月に事前通知の後で定期監査があった日には、子ども22人を休園させて、人数を隠蔽していたそうです。
しかしその監査で、給食の少なさや、室内温度が14度と低いことなどの不審点が見つかったため、約20日後に抜きうちで監査を行ったところ、不正が発覚しました。
兵庫県知事も「園の運営として異常」として、認定取り消しの意思を示しています。
不正発覚後、3月14日に行われた保護者説明会では、園長には反省の色が全く見えず、語尾を伸ばしながら原稿を読むだけという印象だったようです。
その園長の態度にイラっとして声を荒げる保護者もいたようですが、結局、園長だけ途中で退席してしまい、残された保育士たちが泣きながら「守ってあげられなくてすみません」と謝罪しているという状況でした。
地域の報道に対し、小幡育子園長は、「認可外保育所だった時代の感覚で運営していた。認定こども園としての自覚が足りなかった」と話しているようですが、認可外保育所でも、このような保育は許されません。
うわさによると、園長は園の売り上げを自分の買い物やディズニーランドなどに使用していたという話もあります。
しかし、何より怖いのは「営業停止」や「資格はく奪」などの措置がないことです。
このような悪質な人が二度と子どもたちの保育にかかわらないよう、厳重に処罰してほしいものですね。
photo by Chris_Parfitt