注射1本で白血病が治る時代に!?
世界初の治療法で、苦しむ赤ちゃんを救ったのは「遺伝子操作された細胞」でした!
●生後14週間から白血病に。死を宣告された赤ちゃん
生後14週間で急性リンパ性白血病を発症した、レイラ・リチャーズちゃん。
1歳になるまでずっと、大人でも辛い抗がん剤投与を行い、白血病の決定打となる骨髄移植も受けてきました。
しかし、レイラちゃんの白血病は、特に攻撃性の高い性質を持つ、相当てごわいタイプ。
あらゆる治療で効果が出せず、白血病の再発を繰り返してしまいます。
1歳を過ぎる頃、レイラちゃんを治療する方法は全てやりつくし、もう手の打ちようがありませんでした。
後は悪化していく白血病を受け入れ、痛みや苦痛を少しでも和らげながら、レイラちゃんの死を待つのみ、という状態になってしまったのです。
苦痛と衰弱でぐったりしていく1歳の女の子に、誰も何もしてやれない。
とても残酷な現実でした。
医師たちは、レイラちゃんを救うため、藁にもすがる思いで、まだ研究中の、ある新しい治療法に望みをかけました。
遺伝子操作した細胞『UCART19』を、レイラちゃんの体に注入したのです。
マウス実験では効果が出ていたものの、人間に使用されたことはありません。
死を目の前にした、最後の賭けでした。
●奇跡の回復
レイラちゃんに注射された『UCART19』はほんの1ml。
しかし、2週間経っても効果が出ないどころか、レイラちゃんの肌に発疹ができて、かぶれが悪化してしまいました。
あきらめのムードが漂いました。
しかし、さらに数週間が経過した頃、レイラちゃんの血液検査の結果がよくなっていたのです。
レイラちゃんの病状は少しずつ改善していき、投与して2ヶ月後には、退院できるほどに元気になったのです。
死を覚悟していた赤ちゃんが、こんなに回復するなんて、医師たちも「奇跡だ!」と語ります。
家族そろって暮らすことができて、本当によかったですね!
最近いろんなところで遺伝子操作の話が聞かれるようになり、よく分からず怖いと感じる人も多いでしょう。
でも、遺伝子操作は、恐ろしいものではなく、使い方によって、家庭にたくさんの幸せをもたらしてくれるのですね。
遺伝子操作の仕組みについて、もっと詳しく読みたい方は、そのまま以下をご覧ください。
遺伝子操作について
それにしてもレイラちゃんの白血病を退治してくれた細胞『UCART19』ってどんなものなんでしょうか?なんで効くの?どうやってつくるの?
●遺伝子操作した武装細胞『UCART19』
白血病は、白血病細胞が暴走して体内の他の細胞を攻撃している状態です。
遺伝子操作された細胞『UCART19』は、『対白血病武装細胞』とも呼ばれ、2つの特徴があります。
・白血病細胞だけを狙って攻撃する
・白血病細胞からは見えない
悪者の白血病細胞は、見えない武装警察『UCART19』から、一方的にコテンパンにやられてしまう訳です。
透明人間になったゴルゴ13が送りこまれた、という感じでしょうか。
●遺伝子操作ってどうやるの?→ハサミで切ってつなげる!
ちなみに遺伝子操作とはどうやって行うかというと、制限酵素と呼ばれる分子のハサミを使って、遺伝子の中の特定のDNA配列を切断して、編集するのだそうです。
まるで工作みたいですね。
武装警察『UCART19』は、もともと人間がもっている免疫細胞「T細胞」の改良版。
<薬剤耐性のあるがん細胞を攻撃する>というように遺伝子操作を行ったのです。
がん以外の病気にも効果があると考えられています。
奇跡を起こした治療法ですが、まだレイラちゃんただ1人が成功しただけです。
今後、いろんな人に効果を出せる治療となるのか、さらに研究を続けていくとのことです。
あと数年後には、がんも注射1つで治る時代が来るのかもしれませんね!
Photo by Philippe Put