生後10か月で、病気で腕を切断した女の子が、運命的に出会ったのは、同じように事故で腕を切断された友達でした。
スカーレット・ティップトンちゃんは、病気により、通常の3倍にも膨らんだ左腕をもって生まれてきました。
この病気は「未分化紡錘細胞肉腫 (Undifferentiated Spindle Cell Sarcoma)」といわれる一種のがんで、放っておくとどんどん増えて、正常な細胞までがん細胞に変わってしまい死に至る危険がありました。
そのため、スカーレットちゃんの命を守るために、生後10か月の時に、この左腕を切断する手術を受けることになったのです。
がんに侵された部分をすべて取り除いたため、腕だけでなく、肩や鎖骨、肩甲骨まで摘出。傷口には皮膚移植を行う大手術でした。
その後も入院しながら19回もの手術、検査や輸血を行い、大きな苦痛に耐えてきたスカーレットちゃん。
腫瘍の摘出ができて命の危機を脱することができたものの、体の発達に遅れが出て、1歳を過ぎても1人で立ち上がることすらできませんでした。
いつでも笑顔を欠かさないスカーレットちゃんですが、一緒に遊べるお友達がいません。
両親は、いつしか、彼女とともに成長していける友達はいないかと、探し始めました。
やがて、両親は1匹の子猫と出会います。
発見された当初、右の前足が引き裂かれ、足の先が体からぶら下がっていて、瀕死の状態でした。
おそらく車かモーターなどに巻き込まれる事故に遭ってしまったのでしょう。
生きているのがやっとの子猫を看護した動物病院の医師は、当初安楽死させた方が幸せなのではと考えたそうです。
しかし、腕を無くした子猫は、強い生命力で生き続け、少しずつ回復へ向かっていました。
子猫が保護されて1週間後、クリスマスの日。スカーレットちゃんの両親は子猫がいる動物シェルターに出かけ、彼女と子猫を引き合わせました。
子猫の腕が切断された傷あとに気づいたスカーレットちゃんは、子猫を指さして「いたい、いたい」と言いました。
そしてママに、「いたいいたい」と言いながら、自分の切断された腕のところを撫でて、見せました。
たった2歳でしたが、スカーレットちゃんはすぐに、子猫が自分と同じだということを理解していたのです。
そして子猫の方も、スカーレットちゃんに対して、特別な感情を抱いていたようでした。
腕を無くした子ども同士、お互いに、運命的な共感が芽生えたのです。
両親は子猫をひきとり、スカーレットちゃんの好きなキャラクターにちなんで『ドック』と名付けました。
ドックとスカーレットちゃんはすぐに仲良しになり、いつも一緒に遊んで過ごします。
スカーレットちゃんには、がんは無くなったものの、これからも辛い治療がたくさん待ち受けています。
しかし、彼女の気持ちを支えてくれるドックという友達ができて、少しでも心穏やかに治療に向かい合うことができそうです。
この出会いはドックにとっても幸せな出来事だったに違いありません。
ドックとスカーレットちゃんは、これからも最高のパートナーとして、一緒に成長していけることでしょう。
お互いに小さな体で過酷な運命に立たされましたが、素敵な出会いに恵まれて本当によかったですね。
<出典>
abc News