自身が子どもの頃に幼児虐待やネグレクトを経験した人が大人になり、親になった時自分の子どもにも同じ事をしてしまう傾向があります。
●幼児虐待・ネグレクトの経験が人の『衝動』を抑えられなくする
子どもは親の背中を見て育つと言われますが、これは良い事も悪い事も含まれます。
親が自分にしてくれた事は、子どもにとって大きな影響となりますから、幼児虐待やネグレクトを受けた人は、大人になり自分が親になった時に、衝動をコントロールできなくなる傾向がある事が確認されています。
これはある実験によりわかった事です。
実験には2色のライトを使用します。
青いライトが付いたときに手に持ったゴム球を握り、黄色いライトが付いた時はゴム球を握らないというルールを決めます。
このテストでは脳の発達状態を調べる事ができますが、双極性障害を持つ人と持たない人を対象に実験をします。
このテストでは当初の予想を覆し、双極性障害の有無はほとんど影響せず、ある共通点がある事がわかります。
320人を対象に実験を行ったところ、134人が幼児期に虐待やネグレクトのトラウマがある事が分かりました。
●トラウマとの関係
幼児期に受けたトラウマは、双極性障害の有無にかかわらず、衝動のきっかけになり、トラウマを持つ人は衝動をコントロールできないというのです。
しかし幼児期に虐待やネグレクトを受けたとしても、発見が早く適切な対処をした人はこうなる可能性は低い事もわかっています。
実際に自分が子どもの頃に親から虐待やネグレクトを受けた人はたくさんいますが、全ての人が、自分が親になった時、必ず同じ事を繰り返すとは限らないのです。
ただしこうした経験が、虐待の連鎖となってしまう原因はあります。
この実験ではトラウマが精神疾患のリスクを高める事も確認されています。
つまり見方を変えれば、トラウマが精神疾患リスクを図る目安にもなるのです。
とてもデリケートな問題ですが、近い将来幼児期にトラウマを抱え、メンタルヘルスに影響が出ている人にも、有効な治療法が見つかると期待されています。
Photo by Valentina Yachichurova