2012年9月、イギリスで、介護士として働いていたジェンマは、オートバイに乗っていた際、駐車してあった車に激突、その衝撃で空中へ投げ出され、街灯に体を激しく打ち付けてしまいました。
体中に大きな怪我を負ってしまったジェンマは、ドクターヘリで大きな病院へ運ばれ、背骨などの緊急の手術を受けました。
そのときの担当医でさえ助からないだろうと思うほどの大きな怪我だったのです。
彼女は背骨の骨折の他、脳にも大きなダメージを受けていました。
●記憶喪失で、誰が父親かわからない!
3ヶ月もの昏睡状態が続いた後、ジェンマは奇跡的に意識を回復しました。
しかし、意識を回復したばかりのジェンマに驚くべき事実が伝えられました。
彼女が妊娠4ヶ月であることを伝えられたのです。
事故を起こす前に妊娠し、事故後、彼女が昏睡状態でいた間も、赤ちゃんはジェンマのお腹の中で順調に大きくなっていたのです。
しかし、ジェンマは脳へのダメージによる記憶障害を起こしていて、過去3年間の記憶がまるでない状態だったのです。
当然ながら、子どもの父親である男性が誰なのかもわからない状態でした。
ようやく意識を取り戻したジェンマは、その衝撃の事実を知らされるとともに、すぐに大きな決断を迫られることになりました。
今の彼女の体の状態では、妊娠や出産に耐えられそうにもないと判断した医師は、やむを得ず中絶という道も選択肢として彼女に伝えました。
彼女の体は鎮痛剤などが使えないため、陣痛などがきた場合、耐え切れなくなるという可能性もあったのです。
しかし、彼女は出産という道を選択しました。
●父親がわかったけれど…
出産も育児も自分だけではとても大変なのは分かっているけれど、自分の中に宿っている命を考えると中絶という道は選べない。
この子は何か意味があってきっと私の元へと来てくれたのだと思えて仕方がないと。
その後、彼女は背骨の負担軽減などを考慮して、帝王切開で元気な男の子を出産しました。
男の子の父親はその後、誰なのか分かりましたが、子どもの成長には携わって生きたいという一方で、彼女と結ばれることはありませんでした。
大きな事故に負ける事無く無事生還したお母さんと、大きな事故にもまけずお母さんのお腹の中ですくすく成長した赤ちゃん。
色々な障害に負けずに生き延びた二人ですから、これからも幸せに生活してほしいものです。
Photo by Carol Lara