叩かずに済む方法は…
【1】まず、怒らなくてもいい環境をつくる
【2】行動を始める前に話す
【3】日頃から叱り過ぎない
叱る時は
【4】大人もクールダウンする
【5】場所を変える、子どもが落ち着くのを待つ
…などなど、8つのポイントをご紹介します。
文末では、体罰は「悪」か?しつけのあり方を考えていきます。
教育先進国スウェーデンでは、1979年から親が子どもにあらゆる形態の体罰、屈辱的な取扱いをすることを法律で禁止されています。親が子どもの腕をつかみ上げたり、叩いたりするだけ通報されるのだそうです。
これにより、体罰を行う家庭は、この35年あまりで、90% → 10%に減少しました。
しかし、叩かない子育てって、実際に可能なのでしょうか?
●本当に可能なの?叩かないしつけの方法とは?
【1】まず、怒らなくてもいい環境をつくる
強く叱る場面はどんな状況でしょうか?
時間ぎりぎりに出発したり、危ない道を歩かせたり、子どもがいじると危ないものが部屋にあったり…。
これらは、危ないことをする子どもが悪いのではなく、その環境を改善しない親の責任といえます。
子どもが小さいうちは、安全第一。
子どもは好奇心のかたまりなので、悪気無くいろんなことにチャレンジしてしまいます。
触ると危ないものは全て届かない場所や鍵をかけた引出しなどに隠しましょう。
汚されたり、壊されて困るものは出さないようにしましょう。
オシャレな部屋はしばらくガマン。安全グッズでガードしましょう。
子どもと行動する時は、普段の2~3倍の時間がかかるとみて、余裕をもって動くようにしましょう。
【2】行動を始める前に話す
行動を始める前に目を見て言い聞かせましょう。
歩く前に「歩く時は手をつなごうね、つながないと車にひかれてしまうよ」
お店に入る前に「何も買わないよ」
珍しいものは「面白そうだけど触ったら危ないよ、指が切れて痛いよ」
お菓子は、もらう前に「今食べないよ、ご飯の後でね」など。
0歳でも言葉に出して伝えましょう。
事前にくぎを刺しておくことがポイントです。
「もしやってしまったら、この場をバイバイするからね」と、ダメだったときのことを約束しておくのも効果的です。
大人も同じですが、実際に欲求が出てしまってから禁止をされても、納得しづらいものです。
【3】日頃から叱り過ぎない
いつでも叱ってばかりいると、本当にいけないことが区別しづらくなり、結果として親が体罰に走ってしまうことも。
叱るのは、「命や危険に関わること」「人を傷つけること」「道徳に反したこと」の3つに限定するのも一つの方法です。
道徳に反するというのは、例えば、食べ物を粗末にする、祖父母など目上の人に失礼なことをするなど。
家庭によって、これだけは、ということを決めておきましょう。
「ダメ」も連呼すると意味のない言葉になってしまうので、何がいけないか、きちんと理由をつけて伝えるようにしましょう。
●もし叱る時は
子どもなのでどんなに気を使っても、ギャン泣き、危ない行動、約束違反はあります。
そんな時は体罰でない伝え方を。
【4】大人もクールダウンする
カーッとなりそうな時、心の中で5秒数えてクールダウン。
どうしても手が出そうな時は、指に巻いた糸や指輪、爪など、予め決めておいた『叩かない約束』のモノを見て、思い出しましょう。
【5】場所を変えたり、子どもが落ち着くのを待つ
道路の真ん中や、公共の場で泣いている時は、さっと抱きかかえて他の場所へ移動。
気分が落ち着くのを待ってから、目を見て、低い真剣な声で「そんなことをすると危ないでしょ」「他の子が痛いでしょ」など言葉で伝えましょう。
ギャン泣きしている時に言って聞かせるのは無理ですし、大人も子どももお互いに感情エスカレートして、無意味な怒鳴りあいになってしまいます。
【6】気持ちを受け止め、理由を説明、代替案も
「○○したかったのに、残念だったね」「もっと○○できればよかったね」など子どもの気持ちを言葉にして代弁してあげましょう。
また分からない時は「どうして○○したの?」と理由を聞いてあげると、意外と真剣な理由があったりするものです。
そんな時は「そうだったんだね」など、気持ちを受け止めてあげましょう。
その上で、何がダメなのか、どうしていけないのか、簡潔に伝えれば、納得ができます。
「家に帰ってからやろうか」「明日また来ようか」など代替案を出してあげると、納得できることも。
繰り返していると、だんだんと、自分から代替案を考えられる子どもになります。
ギャン泣き以外の方法で、自分の不満を伝えられる人間になります。
子どもの気持ちを無視して、大人の都合だけを押しつけても、反発が強くなるばかりです。
【7】いいことをしたら褒める
つい、悪いことをしたら叱る、罰を与えるという方法になりがちですが、悪いことをしていない時に褒めることも大切です。
『公共の場で長時間、騒がなかった』それだけだって、いい子にしていた証拠なのです。
「静かにしててくれてありがとう、買い物ができて助かったよ」など口に出して伝えるようにしましょう。
ガマンしていた時、というのは功労が目立ちにくいものですが、ちゃんと気づいて認めてあげると、子ども自身も意識して努力できるようになります。
また日頃からたくさんスキンシップや愛情表現をして、いつでも大好きで認めていることを伝えてあげましょう。
【8】何度も繰り返し伝える
子どもは記憶力も弱いし、夢中になると約束を忘れやすいものです。
以前説明したことも忘れ、何度注意しても繰り返し、さすがにイライラして体罰でバシッと覚えさせたくなります。
ここが「叩かないしつけ」のつらいところですが、ぐっとガマン。
精神的な苦痛や虐待はよくありませんが、行動の結果、何が起こるのかを理解させることは大切です。
例えば、食事の途中でふらふらするなら3回まで注意して、それ以降は「もうご飯の時間はおしまいね」と食事を片付け、どんなに欲しがっても次の食事まであげない。
いつまでも服を着ないで遊んでいるなら、「絵本を読む時間がなくなっちゃった」といってもいつものご褒美を無しにするのも一つの方法です。
逆に、早く終わらせたからママと一緒に遊べる、公共の場で静かにしていたからハグしてもらえる、など、頑張った時に認めてもらえるという経験を積み重ねるようにしましょう。
●叩いてしまったら
体罰をしないよう努力しても、つい叩いてしまう場面もあるかもしれません。
まず、頭、顔、お腹は、ダメージの大きな部位で後遺症も残りやすいので、絶対に叩かないようにしましょう。
また、叩いてしまったら、すぐにフォローできるといいですね。
子どもが落ち着いてから、ゆっくりと抱きしめて、子どもを嫌いで憎くて叩いた訳でないことを伝えましょう。
「叩いてごめんね」「だけど○○はやっぱり危ないから、しちゃいけないことだよね」「大事なあなただから、危ないことをしてほしくなかったの」と、愛情を伝えて安心させてあげましょう。
●体罰は「悪」か?
体罰そのものが悪いことでなく、『エスカレートしやすいこと』、『虐待との境界があいまいになりやすいこと』が問題だといえそうです。
虐待死する子も「しつけのため殴った」と言われることが多く、外からは正当性が判断できないのです。
その不透明性を払拭することも、スウェーデンで、体罰を全面的に禁止にした理由の一つではないでしょうか。
子育ては迷いの連続ですが、年々そのやり方や認識が変わっていて、考えさせられますね。
<出典>
子どもに対する暴力のない社会をめざして ~ 体罰を廃止したスウェーデン30年のあゆみ
<画像>
Photo by Runar Pedersen Holkestad