スウェーデンでは、1979年から親が子どもにあらゆる形態の体罰、屈辱的な取扱いをすることを法律で禁止しています。
親が子どもの腕をつかみ上げたり、叩いたりするだけ通報されるのだそうです。
スウェーデンに限らず、ヨーロッパ全体で、子どもに対する体罰の全面禁止に向けて法律などが整備されつつあります。
●なぜ?スウェーデンでしつけの体罰を禁じた理由
昔はどの国でも、子どもが悪いことをすれば、大人が体罰を行うことは一般的でした。
『愛のムチ』という言葉があるように、体罰は真剣に叱る、愛情表現の一つとも考えられていたのです。
スウェーデンでも90%以上の家庭が、大人が子どもに対して、体罰や折檻を行っていました。
同時に、夫が妻を殴る、社長が社員を殴る、など、力や立場の強い者が、弱い者を『指導のため』に体罰することも一般的だったのです。
しかし、19世紀後半には『夫が妻を殴る権利』が、そして20世紀前半には『雇用主が被雇用者を殴る権利』が廃止されました。
1930年頃には、子どもも殴られるべきでないという認識が広がっていきました。
そうなった背景は、世界的に『子どもにも権利がある、大人の付属物やできそこないではなく、生まれた時から一人の人間である』という認識が広まりました。
同時に小児科や精神学者などの専門家によって、体罰や精神的虐待が、人間の成長に大きな悪影響を及ぼすことがわかってきました。
これを受けて、法律が改正されていきます。
1958年、学校での体罰を禁止。
1966年、『親が子どもを叩く権利』に関する記述は親子法から削除されました。
1979年、『親子法』の改正案を可決。スウェーデン国会は、親が子どもを育てる際に、子どもへのあらゆる形態の体罰またはその他の精神的虐待に当たる取扱いを、はっきりと禁止しました。
これにより、体罰を行う家庭は、35年あまりで、90% → 10%に減少しました。
実施して20年後、1990年代後半、若者の犯罪の減少してきたそうです。その主な要因は、若者の窃盗罪と器物損壊罪の減少でした。
法律改正当時、「体罰をなくせば、子どもたちは凶悪になって、犯罪が増えるだろう」と言う人もいましたが、そうでないことが実証されたのです。
●なぜ体罰がいけないの?
なぜ体罰がいけないのか?それは、子どもを傷つけ、恐怖心によって服従させることを目的としているからです。
例え大事なしつけだとしても、相手が未熟な子どもだとしても、暴力や精神的苦痛以外の方法で、しつけを行い、伝える努力が必要なのです。
<体罰がよくない理由>
◆親の問題
・最初は大事なことで叱っていても、暴力がクセになり、だんだんエスカレートしてしまう。
やがて、たいしたことがなくても、親のストレスなどで暴力を使うようになってしまう。
◆子どもの問題
・初めのうちは暴力が怖くて言うことをきくが、だんだん慣れてしまって、服従させるためにもっと強い暴力や罰が必要になってしまう。
・恐怖心で従っているだけなので、何が本当にいけないことか学んでいない場合も。親が見ていないところで悪さをする可能性がある。
・暴力で解決することは良いことだと認識してしまう。
・暴力や過度な罰によって、心身の発達に悪影響が出る
特に複雑なことが理解できない0~2歳は、体罰の恐怖の方が大きくて、大切なしつけの中身は伝わっていないことが多く、体罰は毒になっても薬にはならないのです。
例えば、上司が部下を殴る事件は、日本でも度々起こっています。
遅刻が多く、反省の色を見せない社員に腹を立てた社長が、首にスタンガンを押しつけて頭からポリ袋をかぶせベルトで縛って懐中電灯で殴って暴行するという障害事件がありました。
もちろん程度の問題もありますし、何度指摘されても遅刻をなおさなかった部下ももちろんいけないのですが、暴行することが指導方法でないと感じた人も多いでしょう。
子どものしつけは、未熟な部下を指導するのと同じくらい、骨の折れる、手間のかかることなのです。
●本当に可能なの?叩かないしつけの方法とは?
では実際にどんなことに気をつければいいでしょうか?
日本でも体罰のないしつけは可能なのでしょうか?
<出典>
子どもに対する暴力のない社会をめざして ~ 体罰を廃止したスウェーデン30年のあゆみ
<画像>Photo by HA! Designs – Artbyheather
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