端午の節句というとヨモギとしょうぶを思い浮かべる方もいますが、なぜこれらを食べたり飾ったりするのでしょうか?
実はヨモギとしょうぶには魔除けの力があると考えられているのです。
ヨモギとしょうぶに関する昔話「食わず女房」というお話を知っていますか?
●「食わず女房」はこんな話
昔、あるところに一人の欲張りな男が住んでいて、常々「ものを食べない嫁がほしい」と言っていました。
そんなある日一人の美女が戸を叩き、ものを食べないから嫁にしてくれと男に頼みました。
男は大喜びで女を嫁に迎えました。確かに嫁はよく働くのに全くご飯を食べないのです。
これはいい嫁をもらったと思っていた男でしたが、10日ほどたったある日、米びつが空っぽになっていることに気が付きました。
不思議に思った男は「山に行く」と言って家を出た後、そっと引き返して家の中を覗き込みました。
すると嫁は大きなおにぎりを何十個も握って、髪の毛の間から大きな口を開いておにぎりをどんどん食べていくではありませんか。
これは大変だと男はそ知らぬふりをして家に戻り、山の神に女房と分かれるよう言われたと告げました。
すると女房は恐ろしい鬼婆の姿になって「さては、見ていたな」と男を捕まえ、大きな桶に男を入れると、ひょいと頭の上にかついで、山の鬼の村へ向かいます。
女房の正体は人食い鬼婆だったのです。村に連れ帰って、男を食べるつもりなのです。
男は途中で藤の木のつるがさがっていたのをつかんで、桶から逃げだしました。
気づいた鬼婆が後ろからすごい速さで追いかけてきましたが、男はヨモギとしょうぶが茂る草むらに身を隠しました。
すると、しょうぶは刀になって、鬼婆に刺さり、ヨモギは毒になって、触れた鬼婆を溶かしてしまったのです。
ヨモギとしょうぶのおかげで、鬼婆は死んでしまい、男は助かったということです。
●ヨモギとしょうぶの香り
しょうぶは、葉に独特の香りがあり、これが魔除けになると考えられていて、お風呂に葉を浮かべる「しょうぶ湯」も知られています。
ヨモギは草餅に入っている緑の葉で、こちらも独特の風味が食欲をそそりますね。
少し怖くてはらはらどきどきするようなお話、端午の節句に読んでみてはいかがでしょうか。
そして、草餅を食べたり、しょうぶ湯に入れば、特別な体験になるはずです。子どもにとって活きた経験は心の糧となるでしょう。
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