子どもの歯が抜けるのは、日本だけではなく海外でも子どもの成長として嬉しいことです。
●捨てている人も多かった!?
日本では乳歯を屋根の上、または縁の下に放り投げて、丈夫な永久歯が生えてくるよう願う風習がありますが、海外では乳歯を枕の下に入れておくと妖精がやってきて、コインに替えてくれるという風習もあります。
ですが、もし子どもの抜けた乳歯が将来医療的な役に立つとしたらどうでしょうか。
●どんな病気やケガも治せる!?幹細胞(かんさいぼう)
ちなみに、人間の体は、数多くの細胞から構成されており、毎日新しい細胞生まれ変わることで、健康状態を保っています。
細胞には、それぞれいろいろな役割が決まっていて、例えば、脳と胃では、違う細胞が、決められた仕事をしていて、これらを入れ替えることはできません。胃の細胞を脳にもっていっても、脳にはならないのです。
ところが、特別に、どの細胞にも変化できる幹細胞(かんさいぼう)という細胞があります。
おおざっぱにいうと、肌でも、内臓でも、脳でも、損傷した部分に入ると、幹細胞はその場所にふさわしい細胞に変化して、修復することができるのです。
全ての細胞の元になる「卵」のような存在というとイメージしやすいかもしれません。
●幹細胞は抜けた乳歯に入っている
そんな万能ともいえる幹細胞は、抜け落ちた乳歯の中に入っているのです。
乳歯の中心、わずかな血液の中に、その子の幹細胞が詰まっているので、これをしっかり保存しておくことで、将来、その子が病気やけがをしたとき、治療に役立てる可能性があるのです。
●幹細胞があれば救える命
自己複製や様々な細胞へ分化していく機能を持っているのが幹細胞です。
もし幹細胞を保管しておけば、こんな難病もスムーズに治療できるのです。
・白血病
骨髄ドナーが見つからないと死の危険性が高まる血液のがんである白血病。
骨髄移植をせずとも、自分の細胞で治療ができる可能性があります。
・貧血
女性の中には生活できないほどの貧血になる人もいますが、これも幹細胞によって治療することができます。
このほか、ホジキンリンパ腫や自己免疫疾患、多発性硬化症にクローン病、パーキンソン病や筋ジストロフィーなどの治療が期待されます。いずれも難病で死に至る可能性の高い病気ばかりですが、幹細胞がこれら全てに有効なのは、ありがたいことですね。
●へその緒にも入っている
最近の幹細胞の話題で言うとへその緒をとっておく臍帯血(さいたいけつ)がありますが、これも幹細胞を取りだすものです。
もちろんへその緒ですから生まれてすぐでなければ幹細胞の抽出はできません。
もし臍帯血を保管したい場合は、出産前に産院に頼んでおく必要があります。
しかし、保存していなくてもう手遅れ、という人の方が多いのです。
ところが、最近子どもが6歳前後になると抜け始める乳歯から「幹細胞」を抽出することに成功したのです。
まだまだ研究途中ですから今後度のように効果を発揮するかは分かりませんが、自分の体にもともとあったものですから、拒絶反応の心配も少ないですし、不治の病と言われた白血病などの治療に役立つだろうと期待されているのです。
●乳歯が抜けて48時間以内に!
乳歯から幹細胞を取りだすためには、歯が抜けてから48時間以内に、特別な処置を施さなければなりません。
そこで現在世界中の国々で、乳歯を回収し保温するために、夜中でも対応してくれる歯科医院や企業が増えています。
また、まだ育ち切っていない親知らずなどの組織からも、幹細胞を取り出すことができます。
歯の矯正で抜歯の予定がある方は、検討してみてもいいかもしれませんね。
当然ならが、幹細胞はその子にしか効かないので、他の人のものでは代用できません。
ですから、きょうだいがいる場合、一人ずつ保存しておく必要があります。
医療は日々進化して、驚くような治療法が、数十年後には当たり前になっているのかもしれませんね。
Photo by Valentina Yachichurova