●赤ちゃんを失った母
アメリカ人のへザー・クラークは、3年前に当時7ヶ月だった最愛のわが子を失ってしまいました。
彼女は自分の息子の死を受け止めることができず、落ち込むことが多い日々を過ごしていたといいます。
あるとき、彼女の元へ4歳の女の子、ジョーダン・ドレークがお母さんと共にやってきて、自分の心音を彼女に聞かせたのです。
●なくなったわが子の心音に涙する母
へザーは自分の息子がなくなったとき、息子の臓器を様々な人へ提供し、3人の子の命を救いました。
そのうちの一人が、生まれつき心臓に疾患を抱えているジョーダンちゃんだったのです。
ジョーダンちゃんはへザーの息子の心臓を移植し、今では治療を続けながらも元気に暮らしています。
初めて対面した、2人の母親は、お互いに感謝の気持ちを述べ、涙を流して固く抱き合いました。
わが子の心臓を提供した母と、提供された心臓によってわが子の命を救われた母です。
ヘザーは、聴診器を耳に当てると、おそるおそるジョーダンちゃんの胸に当てました。
ジョーダンちゃんの心音を聞いたへザーは、自分の息子の心臓が3年後もこうして動いてくれていたことに感謝し、感激したのです。
ジョーダンちゃんがお母さんと家に帰る間際、ジョーダンちゃんはへザーにプレゼントを手渡しました。
それはテディベアの人形でした。
テディベアに聴診器を当ててみてといわれ、恐る恐る充ててみると、なかからへザーの息子の心音が聞こえてきたのです。
ジョーダンちゃんがお母さんに頼んで、自分の心音を録音したものをテディベアに組み込んでもらったものでした。
へザーは自分の息子の心臓がまだ生きて動いてくれていたことを確認できた喜びと、自分の息子の心音が何時でも聞けるテディベアをもらい、ようやく自分の息子の死を受け入れる覚悟ができたのです。
日本では臓器提供を行っても、プライバシーなどの観点から、臓器の提供を受けたのが誰なのか、公表されることはありませんし、臓器提供した人たちがこのように触れ合うこともできません。
臓器を提供した側も誰に臓器が提供されたのか教えてはもらえないのです。
しかし、このように、自分のなくなってしまった子どもの臓器を受け継いで、病気を克服し生きていてくれる人がいると知るだけでも、臓器提供した側の周囲の人たちは嬉しいことと思います。
きっと、今回の出来事はへザーにとって一生忘れられない出来事になるに違いありません。