日本にはなんと現在、推定1万人もの「無国籍児」がいると言われています。
こんなことが起こってしまうのはどうしてなのでしょう。
●離婚 → 再婚 → 妊娠 → 出産 = 無国籍の子供!?
もともと、日本では離婚後300日以内に生まれた子どもは、前の夫の子どもにしなくてはいけないと法律で決められていました。
「300日ルール」などと呼ばれるものです。
しかし、女性の妊娠期間はおよそ280日。性交渉から出産までの期間は、さらに短く260日あまり。
この誤差のせいで、運命が大きく変えられてしまう、悲劇の親子が多いのです。
離婚が成立してから、1か月後に次の夫と結婚して、すぐに妊娠した場合、その子は、前の夫の子になってしまう可能性があります。
離婚 → 再婚 → 妊娠 → 出産
…この流れ、女性として何も間違っていないはずなのですが、現在の法律では、「夫の子」このような現象が起こってしまうのです。
●無国籍児の問題は誰にでも起こり得る
そのため、前の夫の子どもにしたくない、という女性が、あえて出生届を出さず、子どもが無国籍者になるという実態がかなりあります。
特に前夫のDVなどで逃げるようにして離婚した人は、子どもを守るために無国籍にするわけです。
しかし、戸籍がないということで、子どもにはたくさんのデメリットが出てきます。
例えば就学通知が届かず、小学校・中学校の義務教育を受けることが出来ない、健康保険証がもらえないので医療費は全額自己負担となる、また、携帯電話の契約や賃貸住宅の契約が出来ない、銀行の口座も作れず、就職にも大きなハンディキャップとなります。
●実際に無国籍になった少女の例
この無国籍児の問題をテーマにしたテレビ番組には、33年もの間、無国籍だったという34歳の女性が登場しています。
この女性の母親は、元夫から度重なる酷い暴力を受けており、経済的にも精神的にも追い詰められて離婚もできないまま、逃げて出してきたと言います。
そしてこの女性はその後、実の父親と母親と出会って産まれたのですが、母親が元夫と離婚が成立できない状態だったために、戸籍が作れなかったのです。
なんとこの女性は学校には1日も通うことなく、市販の教材で自宅学習をしていたと言います。
●古く不便な法律を変えるべき
離婚後300日というのは明治にできた法律で、DNA鑑定などが出来ない時代の法律です。
法律の方がおかしいということで、今やっとこの法律も見直されてきています。
戸籍がないことで、学校にも行けない、同世代との交流がない、携帯電話も契約できずに情報収集さえもできないという、とても深刻な問題になっています。
戸籍を作れば、学校に通うことも働くこともでき、普通の生活が出来るようになります。
裁判手続きなど難しいことも多いですが、弁護士会などに相談に行き、一歩踏み出すことが大切です。
費用のことなども相談でき、名前や住所も出ないようにしてくれる配慮もあります。
まずは、自分が相談しやすいところに相談に行ってみてください。
Photo by Toshimasa Ishibashi