公園などに連れていき、帰る時間になったから子どもに声をかけたものの、なかなか帰りたがらない子どもは多いです。
●帰りたがらない子どもたち
子どもにとっては、楽しい遊びをしているわけですから、継続したい、まだまだ遊びたいという気持ちになるのは当然のことでしょう。
しかし親からしてみると、食事の支度をしてご飯を子どもに食べさせて、お風呂も入らなければならないと、スケジュールがありますから、何とかして早く帰りたいのです。
しかし中には、娘にあと5分だけ遊ばせてあげるというお父さんもいます。
何て心の広いお父さんだろうと思う人が多いのですが、実はお父さんが娘にあと5分だけ遊ばせてあげるのには、切ない理由がありました。
●父子に起こった不幸と父の思い
ある日女性は公園に息子を連れていき、滑り台で遊ぶ息子を見守りながらベンチに腰をかける男性の隣に座りました。
そして自分の子どもはそこにいる男の子だと指をさしました。すると、男性は「可愛いですね」と言って、白いワンピースを着た自転車に乗っている女の子が自分の娘だと言いました。
やがて帰る時間になったのでお父さんは、娘のメリッサに声をかけます。
しかしメリッサは「もっと遊びたい」と懇願し、お父さんはもう5分だけ遊ばせることにしました。
女性はその様子を見て、我慢強いとお父さんを褒めたのですが、男性は次のように話しました。
実は男性には、トミーと言う男の子がいたのですが、自転車に乗っていたところ、飲酒運転の車による事故に遭い亡くなってしまったのです。
男性はトミーと一緒に遊んだ記憶がほとんどないことに気づき、それ以降トミーとあと5分だけ一緒にいる時間が持てるのなら何でもする、そのために同じことを繰り返さないと自分に近い、メリッサにもう5分遊ばせているのだそうです。
実はメリッサを遊ばせてあげるように見えるこの男性の行為は、お父さんが娘の楽しそうな姿を5分延長してみることができるその貴重な時間を娘からもらっているのです。
実際にお父さんは帰る時間になったことを告げるとき、メリッサに帰る時間だよと矯正するのではなく、帰ろうかと問いかけているのです。
子どもがワガママを言っている一つの場面も、見方を変えると、別の幸せが隠れていたりするものなのですね。
Photo by Alexandre Normand