自傷行為、と聞くと、リストカットなど、精神を病んだ人が危険な行為を行う様子を想像するかもしれません。
しかし、ある専門家によると、自殺するつもりはないけれど自分を傷つける行動全般を、自傷行為と定義できるそうです。
●「かさぶたを剥く」「唇の皮をはぐ」ことも自傷!?
つまり、軽いものとしては、髪の毛を抜く、爪を噛む、治りかけのかさぶたを剥く、なども自傷行為に含まれると考えることができます。「その程度なら、誰でもやっているんじゃない?」と思うかもしれませんね。
また、一見勇敢に見える、高い場所からのダイブや、スリルを楽しむ犯罪行為、人の注意をひくために、危険性の高い薬品を大量に飲むなどの行為も、自傷に含めることができます。
●小さな子が爪を噛むことも
小さな子どもがゆびしゃぶりの延長で、爪を噛んでいる姿も、広い意味では自傷に含まれると考えられます。
また、言葉でうまく表現できない子が、イライラして鉛筆の芯などで自分を指したり、パニックになって壁に体を打ち付けたり、体をかんだりするのも、また自傷と言えるのです。
やがて思春期になって、たくさんのピアスやタトゥーを体に刻んだり、万引きなど違法行為を重ねたり、女の子がいろんな相手と性行為を繰り替えすことも、自分を粗末にするという意味で、自傷行為と含める考えもあります。
●自傷を起こす子どもたちの心理
ではなぜ、自分を傷つけるような行為をしてしまうのか?
問われると「暇だから」と答える子が多いのですが、本人も本当にそう感じているのです。
おそらく、その多くは「気持ちを変えたいから」と言う理由です。
ストレス発散や、気持ちのリフレッシュとして、行っているのです。
パニックになりそうな時、前もって自傷行為をして、自分の気持ちを鎮めたりします。
これは、リストカットをする人も、爪を噛む人も、程度の差こそあれ、同様の心理が働いているようです。
他者に向くはずの怒りなどの感情を、自分を傷つけることで紛らわせているのです。
ですから、「自分を傷つけないで!」「そんなことやっちゃダメ!」と行為そのものを禁止しても、意味がないのです。
モヤモヤした気持ちのやり場を奪えば、また別の形の自傷が始まってしまいます。
●自傷行為をやめさせたい時は
もし子どもに自傷行為をやめさせたいなら、もっと他の夢中になれること、楽しい時間、自分を受け入れてくれる安心感が必要です。
爪を噛むことをやめさせたいなら、爪のことはあえて言わず、爪を噛んでいる時に「こっちで遊ぼうよ」と子どもの好きな遊びに誘いましょう。
それを繰り返していくことで、リフレッシュしたいときには、自傷以外の行動を自分で選べるようになってきます。
髪を抜く、自分をつねる、など他の行為でも同様です。
指に唐辛子を塗るとか、罰を与えると、逆効果になってしまうので、「すぐに無理やり辞めさせよう」と考えることはやめてください。
おしゃぶり同様、精神安定のための行動を、すこしずつ他の行動に置き換えていくのですから、気長に見てあげることが大事です。
唇の皮や、かさぶたを剥いてしまって、傷ついているようなら、そっとやさしく絆創膏などを貼って、保護してあげましょう。
●自傷の後ろにある原因を
自傷行為の背景には、友達とうまく遊べないなどの小さな原因から、虐待を受けた経験やトラウマなど、大きな原因が隠れていることもあります。
下の子が生まれたり、引越しなどで環境が変わったりして、心細さから赤ちゃん返りやゆびしゃぶりが始まる子もいますが、同じように自傷が始まることもあります。
その行為から気持ちをそらす働きかけと同時に、子どもを苦しめる要因がないか、探りつつ、子ども本人が安心できるよう改善してあげることも大切です。
Photo by Hamish Darby