陣痛がきてから経膣分娩をする場合でも、お産の進み具合は人それぞれで、いろいろなケースがあります。
さらに、中には胎児や母体を危険から守るための緊急措置が取られるケースもあります。
日本の最新医療では、母子の命を守るための出産の緊急措置の方法がいろいろとあります。
出産の際の緊急措置にはどんなものがあるのか、ここでいくつかご紹介しましょう。
●陣痛促進剤(じんつうそくしんざい)
子宮を収縮させて、人工的に陣痛を起こします。飲み薬や点滴で投与されることが多く、薬の量を増やしながら、陣痛の強さを調節していきます。
基本的に、急いで赤ちゃんを分娩させる場合や、予定日を2週間以上超過しそうな場合に使用されます。
急いで分娩をする必要があるのは、陣痛が始まる前に破水が先に起こった場合です。
そのままでは子宮内で赤ちゃんへの感染などが懸念されるため、陣痛促進剤を使用して、一刻も早く赤ちゃんを分娩出来るようにします。
他にも妊娠高血圧症候群などで母体の状態が良くない場合や、胎児の状態が良くない場合など、胎児を早く分娩した方が良いと判断された場合に使用されます。
また、陣痛があるものの、弱く子宮口の開きが遅い場合にも、使用されます。お産が長時間に及ぶことで、母子ともに疲れてしまうので、陣痛もさらに弱くなる悪循環になるのを避けることが出来ます。
●会陰切開(えいんせっかい)
赤ちゃんが出てくる際に、膣の入口の部分、会陰が十分に伸びていない場合には、肛門や直腸までが裂けてしまう恐れが出てきます。また出てくる赤ちゃんの頭や肩がつかえて、出口をふさいでしまうケースもあります。
そのような場合には、会陰をハサミで切開します。急いでいるため、麻酔を使わずに切ることが多いのですが、実際に経験のあるママは、会陰切開の痛みよりも、陣痛の痛みの方が強く、あまり気にならなかったという声が多いようです。
●吸引分娩(きゅういんぶんべん)
これは、赤ちゃんがなかなか出てきてくれない場合に、赤ちゃんの頭にカップを付けて、掃除機のような機械で吸引圧をかけて、赤ちゃんの身体を引き出す分娩方法です。
産道が開ききらない場合、赤ちゃんが引っ掛かり、母体にも赤ちゃんにも危険が出てくるために、分娩のサポートをします。
吸引でなく、トングのような器具で赤ちゃんの頭をはさんで引き出す「鉗子分娩(かんしぶんべん)」という方法もあります。
●帝王切開(ていおうせっかい)
赤ちゃんの旋回異常や、へその緒が複雑に挟まっているなど、経膣分娩に異常事態が発生し、母子の生命が危険な場合、急いでメスでお腹を切り開いて赤ちゃんを取り出す、緊急帝王切開の手術を行う場合があります。
大昔なら分娩が長引いて母子ともに亡くなってしまうケースが多かったのですが、近年はこのように様々な医療サポートや選択肢があるおかげで、お産で亡くなる人が少なくなっています。
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