子どもの虐待をもっと防ぐため、周囲の人が虐待を通報しやすいよう、通報ダイヤルが「189(いちはやく)」の3桁になりました。
2015年7月に、3ケタになってから、全国で通報の件数は跳ね上がり、多くの人が子どもを守るために電話をしてくれるようになりました。
●最長2分の待ち時間、7割が電話を切ってしまう
しかし、新たな別の問題が起こっています。
福岡市では、虐待の電話の件数が8倍に増えたのに、それを処理する設備が追い付いておらず、7割の人がしゃべることなく通話をあきらめて、電話を切っていることが判明しました。
その理由として、通話するまでに、音声ガイダンスで複雑な入力が必要なこと、さらに最長2分も待たされることあげられます。
3ケタ化したものの、110番や119番のように、電話をかけたら自動で最寄りのセンターに割り振りされる仕組みになっていないため、同じ市外局番で複数の児童相談所がある場合、郵便番号を入力したり、音声ガイダンスを聞いて、都道府県や地域を入力しなければいけないのです。
おまけに、20秒ごとに10円の通話料がかかります。
これにより通報を途中であきらめて、電話を切ってしまうケースが多いのです。
●日本中で、虐待通報がほとんど届いていない
そのため、電話番号が3ケタになって、電話をする人が8.4倍に増えているのに、最終的に児童相談所への通報件数がほとんど増えていないというのです。
ある児童相談所の職員は
「子どもの泣き叫び声が聞こえて、せっかく急いで通報しても、音声ガイダンスなどで長く待たされることで、通報をためらってしまうケースが多いのではないか」と、現状を問題視しています。
福岡市同様、日本全国で『通報しようと電話をかける人が増えたのに、最終的に通報できた人が2~3割しかいない』というお粗末な現象が、あちこちで起こっていると考えられます。
虐待通報は、虐待を受けている子ども本人が電話してもいいのですが、こんなに面倒だと、子ども自身が通報することも難しくなります。
この問題に対して、厚労省は「110番のようにすぐにつながる『緊急通報用電話番号』に変えるには、莫大な予算がかかるため、しばらくはこのまま様子を見て、必要があれば改善していく」と説明しています。
もし近くに虐待かな?と気になる子どもがいる場合は、「189(いちはやく)」が手間取りそうだったら、直接、地域の児童相談所の電話番号へかけた方が、早い場合もあります。
スマホなどで「○○市 児童相談」などで検索すると、お住まいの地域の児童相談所、児童相談センターや相談窓口が見つかります。いざという時のために、頭に入れておくとよいでしょう。
●保護施設やスタッフも拡充を
また、せっかく通報して、虐待を知らせることができても、児童相談所のスタッフの人手が全然足りておらず、職員が一日中走り回っても、子どもを保護できない現状もあります。
さらに、ようやく保護しても、保護施設も、保護するスタッフも足りず、守った子どもたちに十分なケアが行き届かない現実もあります。
子どもを虐待から守るためには、今回のような
◇「通報のシステムの整備」
だけでなく、
◇「児童相談所や養護施設のスタッフの補充」
◇「保護施設の拡充」
◇「虐待しないで済む育児フォロー制度」
◇「虐待した親への再発防止フォローや教育制度」
◇「子どもを求めている養親との養子縁組制度の見直し」
など、全体的に改善していくことが必要だと考えられます。
そもそも、虐待のない世の中になるのが一番よいのですが…。
<出典>
西日本新聞
Photo by Rachael Dickensheets (Everhart)