先の丸い歯ブラシが、人体に刺さるとは考えられにくいため、つい油断してしまうのですが、実は、子どもの喉の奥に歯ブラシが突き刺さる事故が相次いでいます。
●1歳児の事故が最多
国民生活センターのデータによると、年齢別では、子どもが自分で歯磨きを始める1歳が最多、続いて2歳、3歳で多く事故が起こっています。
●半数以上が歩くなどして転倒
事故の要因として、過半数は、立ち歩きながらの歯磨きが原因となっています。
口に歯ブラシを加えたまま転倒したり、ぶつかったりした衝撃で、喉や頬の内側に歯ブラシの先端が刺さって起こっています。
歯磨きは座って行うようにし、危険な姿勢をとらないように見守りましょう。
●危険の少ない歯ブラシを使わせましょう
また、仕上げ磨き用の歯ブラシは、しっかり汚れを落とすのに有効ですが、細長い形状のため、子ども自身が使うと喉に突き刺さるリスクは高くなります。子どもが自分で磨く場合は、必ず子ども用の歯ブラシを使わせるようにしましょう。
そして子ども用の歯ブラシも、喉の奥に入りにくい形状のものや、ガードがついたものを選ぶようにすると、より安全です。
事故を防ぐため、歯磨きをしている人にふざけて近づいたりしないよう、家族全員に伝えておきましょう。
また、踏み台から足を踏みはずすこともあるため、洗面所などでは、うがいをするときだけ踏み台に乗り、歯磨きをするときは台から降りるように徹底しましょう。
●歯ブラシが刺さるとどうなるの?
最後に実際にあった事故をご紹介します。
≪国民生活センターより抜粋≫
<事例1>
歯ブラシをくわえたまま転倒し受傷。しばらく様子をみていたが熱が出てきたため救急外来受診。下顎の歯の奥に1㎝大の傷があり、出血はないが傷はやや深い。血液検査、CT 検査により口の中の傷による感染の可能性があり入院した。(3歳・要入院)
<事例2>
歯ブラシをくわえて走っていたところ転倒し、歯ブラシを喉に突き刺し、口の奥を受傷し出血した。血は自然に止まったが、発熱し、元気がないため救急外来受診した。喉に血腫・膿瘍の疑い等があり、8日間入院した。(4歳・要入院)
<事例3>
歯ブラシをくわえてソファに座っていたが、前のめりに転落し歯ブラシが刺さった。親が抜去し歯科医院へ行ったが、その後発熱と首に腫れがあり受診。蜂窩織炎(ほうかしきえん)の診断にて入院。(1歳・要入院)
<事例4>
歯磨きの準備として、子供に歯ブラシを手渡しておき、母親は夕食後の後片付けをしていた。子供が歯ブラシをくわえたまま駆け寄ってきて、母親の背中に勢いよく抱きついた。その瞬間に異変を感じ、泣いて痛がる子供の口腔内を見ると、歯ブラシの先端が右頬粘膜に刺さっていた。慌てて歯ブラシを抜去したところ、出血は少なかったが、傷口から組織があふれ出てきて大きくなった。口を閉められずよだれが出続ける状態となったため、救急外来受診。(1歳・要入院)
≪抜粋ここまで≫
歯ブラシで突くと、先端の太いものが無理やり刺さるため、喉や頬の組織に大きな傷が残り、雑菌による炎症が起こりやすいようです。ある意味では刃物よりタチの悪い傷になります。
そして血腫や膿瘍につながりやすくなります。
また前述にあった蜂窩織炎(ほうかしきえん)などは、皮膚などの組織に炎症が起こり、高熱や寒気、ふるえ、吐き気、関節の痛み、倦怠感が襲います。急激に容体が悪化し、最悪の場合は命を落とすこともあります。
歯を健康に保つための歯ブラシですが、重大な事故にもなりかねませんので、歯ブラシの見直し、子どもへの声掛けを徹底しましょう。
Source:
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/kyougikai/h28/06_toalert.html
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170215_1.html
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170215_1.pdf
Photo:Tatsuo Yamashita