子供の血液型はなんだかんだ気になりますよね。
ABO血液型と呼ばれる血液型が一般的で、子供の血液型は両親の血液型によって決まります。両親の血液型によって一般的には生まれるはずがないとされる血液型も決められています。
ですが、生まれるはずがない血液型だからといって疑うのはまだ早いかも。
実はごくまれに両親から生まれるはずがない血液型の子供が生まれるケースも存在するんです。
さらに、子供の血液型がわからないことや、あとから子供の血液型が変わることも。
両親と子供の血液型の関係性について詳しく解説していきます!
血液型の基本はABO型
一般的に知られている血液型は、ABO型という分類の血液型です。
ABO型では、A型、B型、O型、AB型の4つの血液型に分類されています。
このABO型が一般的に「血液型」といわれるものです。
輸血の際に必要となる情報のひとつで、輸血はA型の人にはA型の血液、B型の人にはB型の血液で同じ血液型の血液が使用されます。
これは、A型の血液はB型の血液に異物反応を起こし、B型の血液はA型の血液に異物反応を起こしてしまうためです。
ABO型の赤血球の輸血はO型が万能!
この輸血には例外があり、それがO型とAB型です。
A型、B型の人は「赤血球の輸血」と呼ばれる輸血を行う際、同じ血液型の血液以外にO型の血液を輸血することができます。
赤血球の輸血とは、酸素を運ぶ役割をしている赤血球を輸血することで、体内の酸素の循環を改善することができる輸血方法です。
A型とB型、AB型の血液はO型の血液に対して異物反応が起こらないため、輸血が可能です。
一方、O型の人はA型、B型の血液に対して異物反応が起こるため、O型の血液しか輸血ができません。
O型はすべての人に赤血球の輸血ができる万能な血液型に思えますね。
ABO型の血漿・血小板の輸血はAB型が万能!
しかし、赤血球の輸血ではなく血漿・血小板を輸血する場合は、AB型が万能なんです!
血小板(けっしょうばん)の輸血では、血液ではなく血小板の成分を輸血する方法で、血小板は止血に欠かせない成分であり、血小板の輸血により止血や出血を抑制する輸血方法です。
血漿(けっしょう)の輸血とは、アルブミン、免疫グロブリン、凝固因子などの成分を輸血する方法で、血小板との相互作用による止血効果、さらに血漿の働きによって体内に栄養や酸素の供給と、体内のガスや老廃物を肺や腎臓に運び適正に体内から排出する効果がある輸血方法です。
血漿の輸血の場合、O型の血漿を輸血できるのはO型の人のみ。
A型、B型、AB型の人にO型の血漿を輸血することはできません。
反対に、AB型の血漿はA型、B型、AB型の人が輸血可能なんです。
O型の人はO型の血漿しか輸血することができません。
基本的には同じ血液型で輸血が行われますが、大規模災害時など緊急時はこうした応用が行われています。
自分自身や子供のABO型の血液型は、知っておきたい大切なポイントですね。
子供の血液型は両親の血液型で決まる
ABO型の血液型は、遺伝で決まります。
子供の血液型は、両親それぞれの血液型を引き継いでいるんです。
画像引用:仙台市立病院
ABO型の血液型は、A型、B型、O型、AB型の4つとご紹介しましたが、医学的に詳しく分けるとAA型、AO型、BB型、BO型、OO型、AB型の6つにわけることができます。
両親それぞれの血液型を引き継ぐため、両親共にAA型であれば子供の血液型はAA型になります。
例えば母親がAA型、父親がAO型の場合は、母親のAと父親のAを引き継いだAA型、あるいは母親のAと父親のOを引き継いだAO型、という風に遺伝していきます。
次の表は、両親の血液型によって決まる子供の血液型を解説しています。
ご自身の当てはまる欄を確認してみてくださいね。
画像引用:株式会社日立医薬情報ソリューションズ
さらに確率を計算していくと、両親がA型の場合は84%の確率でA型の子供、16%の確率でO型の子供が生まれます。
同様に計算すると、両親がB型であれば子供は81%の確率でB型、19%の確率でO型で生まれ、両親がAB型であれば、子供は25%の確率でA型、25%の確率でB型、50%の確率でAB型になります。
そして、両親ともにO型の場合は、子供はO型以外生まれないといわれています。
しかし、O型の両親からA型の子供が生まれるなど考えられるはずのない血液型の子供が生まれることがあるんです。
O型の両親からA型の子どもが生まれる!?
一般的に、両親共にO型の場合はO型しか生まれません。
O型はA型あるいはB型に比べて劣性のため、片親がA型ならAA型またはAO型としてA型に、片親がB型ならBB型またはBO型としてB型になります。
ABO式血液型判定でO型と判断が出るのは、OO型の人のみ。そのため、O型の子供の両親は双方OO型であり、子供もOO型なのです。
しかし、間違いなく両親共にO型で、間違いなく両親の血液型を引き継いでいるはずなのに、O型以外の子供が生まれることがあるのです。
違う相手の血液型を引き継いでいる、などが想像されますがそうではありません。
間違いなくO型の両親から生まれ、両親の血液型を引き継いでいる場合でも、医学的に起こりうることなのです。
これにはシスAB型という血液型が関係しているのです。
シスAB型とは?
O型の両親からA型、B型、AB型の子供が生まれることがある理由は、両親のどちらかがシスAB型である場合です。
先ほど、医学的に詳しく分けるとAA型、AO型、BB型、BO型、OO型、AB型の6つにわけることができると解説しました。
上記でもご紹介しましたが、例えば母親がAA型で父親がAO型の場合は、母親のAと父親のAを引き継いだ「A A」型、あるいは母親のAと父親のOを引き継いだ「A O」型になるという具合です。
これを片親がABで片親がOの場合に当てはめてみましょう。
母親がAB型、父親がOO型の場合、母親のAと父親のOを引き継いだ「A O」型、あるいは母親のBと父親のOを引き継いだ「B O」型のどちらかになります。
よって子供は「A O」のA型、あるいは「B O」のB型になりますね。
ところが、シスAB型は極まれに起こる片親のABと片親のO型を引き継いでいる「AB O」型の状態のこと。
これは赤十字血液センターのホームページでも明記されていることであり、シスAB型は間違いなく起こりうることなのです。
そして、シスAB型は、ABO型血液型の検査ではAB型ではなくO型と判定されることがあります。
このためO型同士の両親だと思っていたら実は片親は「AB O」型、よって子供は「A O」型または「B O」型になるということなのです。
よって、AB型とO型の両親からO型の子供が生まれることも、AB型とO型の両親からO型の子供が生まれることもあり得るということですね。
こどもゆめクリニックによると、シスAB型は0.012%の確率で起こる可能性があるそうです。
シスAB型は同一染色体にA遺伝子やB遺伝子が存在する血液型であり、シスAB型は対立遺伝子の組み合わせによって、シスAB /A1、シスAB /B、シスAB /O の3つの遺伝子型に大別されていて、それぞれ血液型検査での反応態度が異なると考えられています1)。
4歳以下の血液型検査は不正確
子供が生まれた後、血液型が気になって検査する親御さんも多いでしょう。
ただし、生まれたばかりの子供の血液型検査は一般的には行われていません。
子供のABO型の血液型の検査は、最低でも1歳以上、できれば4歳以上で行うと正確に結果が出るといわれています。
生まれたての子供は母体からの影響を強く受けており、正確な血液型の検査はできません。
1歳未満の検査結果の正確性は50%ほどだそう。
特に、4カ月未満の乳児は血清中の抗Aおよび抗Bの抗体産生能がないこと、あるいは新生児においては母親由来の移行抗体が存在する影響を考慮できるために、血液型は必ずしもウラ検査を実施しなくてもよく、オモテ検査のみで判定して良いとされています2)。
できれば、母体からの影響がほとんどなくなる4歳以上になってからABO型検査を受けることで子供自身の血液の反応が得られるようになり、正確なABO型の血液型がわかるようになります。
両親から聞いていた血液型は実は乳児期に検査を受けた不正確なもので、大人になって自分で改めて検査を受けてみたら思っていた血液型と違った、なんて人もいるようです。
母親は妊娠初期の時点で万が一に備えて詳しい血液型検査を受けることがほとんどですが、子供の血液型が気になる場合は同じタイミングで父親も再検査してみてもよいかもしれませんね!
まとめ
子供の血液型は両親にとっては気になるポイントのひとつ。
子供の血液型は両親の血液型から引き継ぐため、ぜひ「子供の血液型は両親の血液型で決まる」の表で確認してみてくださいね。
ABO型の血液型は基本型で、極まれに表れる稀少な血液型もあります。
ご紹介したシスAB型をはじめ、生まれるはずがない血液型の子供が生まれることは医学的にも十分に考えられるということです。
また、生まれてすぐの血液型は不確定なため、気になる場合は1歳以上、できれば4歳になってから検査をしてみてくださいね。
【参考文献】
1)櫻澤 貴代, 高橋 秀一郎, 渡邊 千秋, 伊藤 誠, 魚住 諒, 増田 裕弥, 早坂 光司, 西田 睦, 杉田 純一, 豊嶋 崇徳ら:新生児におけるcisAB型の血液型検査反応性と発育に伴う抗原量の変化に関する検討. 日本輸血細胞治療学会誌. 2020年66巻1号 p.31-35
DOI https://doi.org/10.3925/jjtc.66.31
2)室井一男:赤血球型検査(赤血球系検査)ガイドライン,(改訂2版),日本輸血・細胞治療学会,東京,2016.
DOI http://yuketsu.jstmct.or.jp/wp-content/uploads/2016/10/5bc721e299263f6d44e2215cbdffbfaf.pdf
甲斐沼先生監修プロフィール
甲斐沼 孟(かいぬま まさや)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、2年間の初期臨床研修を経て大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、国立大阪医療センター、大阪大学医学部附属病院で勤務後、現在は国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に貢献して研鑽している。救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域、産業保健業務が専門。※2023年2月時点
Photo by Sakena