12月6日、大分県佐伯市で行方不明になっていた2歳の女の子、徳永暦(こよみ)ちゃんが、21時間ぶりに発見されました。
このニュースを受けて、日本中の人が胸をなでおろしたのではないでしょうか。
発見された我が子に、号泣する母親の映像を見て、もらい泣きした人も多かったようです。
●親が目を離した5分で行方不明に
この事件は、5日午後1時頃、曽祖父母宅近くの畑で、家族とともに遊んでいた2歳の暦ちゃんが、大人たちが農作業で目を離した5分程度の間に行方不明になったというものです。
警察や消防も加わり捜索したものの、見つからず、夜9時に一旦捜索を打ち切り、全国のニュースで公開。
翌朝、9時50分頃、畑から歩いて2キロ、直線距離で約600メートル離れた山中の斜面に、一人でうずくまっているところを、父親の友人によって発見されました。
家族と離れてから、山をさまよい、寒い暗闇の中、たった一人で夜を明かしたようです。
21時間ぶりに親に抱かれた暦ちゃんは泣いてはおらず、口元に泥やかすり傷があるものの、健康状態に問題は見られなかったそうです。
父親は報道陣に対し「ちょっと足を痛めたみたいだが、大丈夫だと思う。みなさんのおかげです」と説明しています。
12月でしたが、この夜は例年より気温がやや高かったこともあり、天候にも救われたようです。
●よちよち歩きの2歳でも、2キロは余裕
誘拐の可能性などもあがっていましたが、結果的に「迷子」で、無事に発見されてよかったですね。
2歳はまだ歩くペースも遅く、すぐ疲れてしまって遠くまで行けない印象があります。
そのため警察や消防は主に近くを探していたのですが、実際には、暦ちゃんはかなり遠くまで歩いて移動していたのです。
月齢にもよりますが、2歳になると、子ども達は歩行が安定し、行動範囲が広がり、好奇心の赴くままにどんどん行動してしまう力があります。普段はそう見えなくても、実は大人が思っている以上に体力も持久力も育っているのです。
ですから、やる気がない時は「歩けない~、抱っこ~」のくせに、本気を出すと、4~5キロは歩けてしまいます。
一説によると、毎日歩かせる距離は、年齢+1キロ(2歳なら3キロ)が理想的な運動量だともいわれているくらいです。
そして、「うちの子は臆病だから、あまり遠くまでいかないはず」という過信も禁物です。
チャレンジ精神の旺盛な2歳児は、何かのきっかけで、突然『冒険スイッチ』が入ってしまうことも珍しくありません。
今回、警察や消防が「2歳の足ではそんなに遠くまで歩けないはず」と狭い範囲ばかりを探したことが、発見の遅れにつながったとも指摘され、反省点となっているようです。
子どもの能力を侮ってはいけないことが再認識されました。
●地域の絆はスゴイ!住民の協力で見つかった
暦ちゃんを発見したのは地域の住民でした。
2歳の女の子が行方不明と知った地域の住民たちが、「居ても立ってもいられない」と、自主的に夜遅くまで、あちこちを探してくれたそうです。
たくさんの人たちが、夜の暗闇を、懐中電灯で照らして動き回る様子を、遠くから見た人は「蛍のようだった」と話しているほどです。
警察や消防の捜索は夜9時から翌朝7時までは打ち切りだったのに、住民たちは一晩中探してくれたようです。
そして、実際に暦ちゃんが見つかった場所は、警察の捜索範囲ではない場所でした。
住民が協力していなかったら、未だに発見できていなかったかもしれません。
暦ちゃんを発見した男性は、たまたま父親の知人で、警察や消防とは別の場所を探そうと、山に入ったそうです。
斜面を登ったら白い上着が見え、近づいてみると、うずくまった暦ちゃんだったそうです。
発見当時、暦ちゃんは泣いておらず、落ち着いた様子だったと振り返ります。
ケガなどなくて本当によかったですね。
最近は、都市部で「誘拐防止のために、子どもには知らない人とは挨拶させない」としつけている地域もあり、防犯の意識も変わってきています。
しかし、今回のように、暦ちゃんを知っている人も知らない人も、地域の大人たちが大勢動いてくれたおかげで、比較的早く発見することができたのも事実です。
子どもの安全とはどういうものなのか、地域とはどう付き合っていけばよいか、考えさせられますね。
Photo by Freedom II Andres